2012年6月1日金曜日

米国先物市場における規制


先物業界は複層的な規制制度を持っており、それにより透明性のある市場や効果的なリスク管理が可能となります。
近年、“デリバティブ”という言葉がメディアでよく扱われるようになり、先物(そして先物のオプション)は、2008年の金融危機に巻き込まれたクレジット・デフォルト・スワップといった、体制化も規制もされていない店頭取引商品とひとまとめにして考えられることが多いようです。

確かに先物契約は理論的には原資産から派生した、もしくはそれに基づくデリバティブです。しかし、悪名高い“クレジット・デフォルト・スワップ”や同様の店頭取引デリバティブとは無関係です。先物契約は取引先リスクを最小化するために設計された、連邦政府によって規制された取引を行う規格化された投資です。先物を取引するマネージャーは株式市場に関わるプロと同様のライセンス取得が求められ、同様に規制の対象となります。

100年以上の歴史のある米先物市場の規制枠組みは連邦政府と業界の両方のレベルでの取り締まりによって成り立っています。

CFTC(商品先物取引委員会)

先物取引は1848年アメリカで始まり、連邦政府による先物取引への規制は1920年代初頭から始まりました。今日、アメリカのすべての先物とそのオプションは商品先物取引委員会(CFTC)によって規制されています。CFTCは連邦政府によって義務化された先物市場規制機関で、株式市場では証券取引委員会(SEC)にあたります。CFTCは1974年に独立機関として設立され、1930年代に作られた先物取引委員会の後を継いでいます。

CFTCの任務はフェアでオープンな競争市場を維持すること、そして市場参加者を詐欺や違法行為から守ることです。CFTCはその他に、大口投機家、商用ヘッジ投資家といった異なるタイプの先物投資家が保有する先物やそのオプションのポジションを示す建玉明細報告(COT、または大口投資家報告ともいう)といった市場や業界のデータをあつめ、公表するという仕事も行っています。

米先物取引の監督業や上場した先物契約の承認、取引の決済プロセスにおける信頼性の保証以外に、CFTCはプロの先物取引マネージャー(商品投資顧問業者(CTA)、商品先物基金運営者(CPO))に登録を義務付け、運用や投資資金の勧誘、投資家に提供する情報に関するガイドラインに従うことを要求します。

NFA(米国先物協会)

CTAとCPOはまた米国先物協会(NFA)への登録が義務付けられています。NFAは米先物取引で公にビジネスを行うすべての人が所属する自主規制機関です。NFAのデータによると4200以上の企業と5万5000以上の個人が登録しています。NFAの業務はこれから先物取引のプロとなる人が“ビジネスに従事するのにふさわしいか”を見極め、連邦政府の規制の対象となる個人や機関を識別することです。NFAはまた、投資家やマネージャーがNFAやCFTCに登録された先物業者や個人のバックグランドをリサーチするのに使用できるデータベースをオンラインで提供しています。

さらに、CTAとCPOはプロとして先物を取引できるようになるためには、シリーズ3の検定試験に合格しなければなりません(株のブローカーやトレーダーが受けなければならないシリーズ7と同様)。個人の先物ブローカーや仲買業者もまたCFTCとNFAの管理下にあります。

リスク管理

先物市場の枠組みの利点の一つは、取引先リスクを最小化できるということです。これは取引先がデフォルトに陥るリスクのことです。取引の決算を一元管理することで先物取引はすべての買い手に対しての売り手、そしてすべての売り手に対しての買い手となり、さらにそれぞれの登録企業が独立して受諾者責任と資本化要求を満たすことを保証し、一方で取引をも保証することで効果的に取引先リスクを取り除くことができます。(2008年~2009年の金融危機において先物市場ではデフォルトが発生しなかったということは注目に値します)

高い透明性と規制は、規制の対象となっておらず、OTCデリバティブを取引することもある投資業界で不透明性の低い分野に対し、対照をなしています。実際、金融危機以降、クレジット・デフォルト・スワップと先物市場におけるその上場と決算がそのリスクを下げるために規格化されるようになりました。




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