2012年6月19日火曜日

ヘッジファンドへどう投資するか

利用者の限られた投資手段には特権がありますが、時にそのリスクが大きくなることがあります。専門的なポートフォリオを持つヘッジファンドは最高経営者や機関、年金基金、富裕層などを惹きつけ続けて来ました。eVestment/HFN Industry report によると、1990年には500億ドル以下だった運用資産も、今では2.56兆ドル以上となっています。この間に、マネージャーは新たな市場にも参入し、新たなストラテジーを開発してきたため、ヘッジファンドの定義は広がりつつあります。

さらに、ヘッジファンドは広まり、数百万ではなく、数千ドルしか資産を持たない一般の投資家をもターゲットとするようになりました。ヘッジファンドの進歩的な民主化によってその対象は一般の投資家から敏腕マネージャーにまで広がっています。しかし、ヘッジファンドへの投資には注意が必要です。世界市場のボラティリティによって多くのヘッジファンド投資家は大敗を喫し、より緩やかになった規制も投資初心者を知らないうちにリスクにさらすことになっているのです。

注目すべきこと

ヘッジファンドは機会とリスクという二つの性質を持っています。ポートフォリオマネージャーは一般的に価格の下落を見込んだ証券でショートを行い、上昇を予期したときにはロングを行います。また、リターンを拡大するため、借入金(レバレッジ)を使用することもあります。ヘッジファンドという名前からもわかるように、市場の下落に備えてヘッジを行い、市場の方向性に関わらず、常にプラスの収益を生み出すというのが狙いです。この“絶対的な”リターンという目標が、Standard & Poor's 500 Indexなどのベンチマークをしのぎさえすれば勝ち、と考える従来のミューチュアルファンドとの大きな違いといえるでしょう。

ヘッジファンドの大きな魅力は、世界の株式や債券市場と相関性の低いリターンを供給することができるため、投資家のポートフォリオ多様化に非常に有効という点です。 15億ドルという潤沢な運用資産を持つRegent Atlantic Capital LLCの最高投資責任者Chris Cordaro氏はこう語ります。「ヘッジファンドはバランスを強化してくれる。株式のようなリターン、債券のようなボラティリティが得られるが、株式や債券市場とは相関性がない」

ヘッジファンドの利用は比較的簡単ですが、大手で評価の高いマネージャーを利用できるのは少なくとも資産が100万ドル以上の投資家に限られます。資産がこれより少ない投資家は選択肢が限られ、様々なアンダーライイングを扱うマネージャーに資産を配分するファンド・オブ・ヘッジファンズに投資するか、ヘッジングの戦術を用いるミューチュアル・ファンドに投資することになります。

例を挙げると、世界最大のヘッジファンドであるイギリスのMan GroupはMan-Glenwood Lexington fundというファンドを運営しています。証券取引委員会に登録されたこのファンド・オブ・ヘッジファンズは幅広いアンダーライイング・マネージャーに投資を行い、最小投資額は2万5000ドル、Charles Schwab & Co.といった証券会社を用いるファイナンシャル・アドバイザーを通じて販売されています。

他の企業も同様の個人投資家向けファンドを運営しています。Cordaro 氏が推奨するものにAbsolute Strategies Fund があり、これはAronson+Johnson+Ortiz、Metropolitan West Asset Management、SSI Investment Managementといったアンダーライイング・マネージャーに投資するものです。Class-A株の最小初期投資額は1万ドルです。

また、Cordaro氏はHatteras Alpha Hedged Strategies Fund も勧めており、ヘッジド・ミューチュアル・ファンドと呼ばれるファンドも最近人気を集めています。こういったファンドは空売りやレバレッジといった、ヘッジファンドでよく用いられる手段やストラテジーを使いますが、最小投資額が低かったりや毎日資金の引き出しが可能、また手数料も低いなど、ミューチュアル・ファンドの利点も持ち合わせています。こういったファンドにはBaron Partners Fund 、Hussman Strategic Growth Fund 、CGM Focus Fund があります。

利用者の制限

規制当局はリスクに対処できるよう、ヘッジファンドの利用を資金と知識が豊富な投資家に制限しています。SECのウェブサイトによると、取引が認められているのは自己資本、もしくは配偶者との共同資本が100万ドル以上、もしくは過去2年における収入がそれぞれの年で20万ドル以上(配偶者との共同収入なら30万ドル以上)の投資家です。Groucho Marx氏の「私のような人間を会員として受け入れる会には入りたくない」という言葉がありますが、簡単に入れる場所には注意が必要です。様々なマネージャーと資産に投資を行い、正しく分散化するためには100万ドル以上の資本が必要だとCordaro氏は述べています。

低い最小投資額では限られた機会しか得られないことも

より利用しやすいヘッジド・ミューチュアル・ファンドでは時にその手段やストラテジーがあまり柔軟でないことがあります。ヘッジド・ミューチュアル・ファンドは毎日値付けと査定を行っているので、アンダーライイングへの投資は流動性が高く、比較的査定が簡単でなければならないとCordaro氏は言います。しかしヘッジファンドは高いリターンを求めて、より流動性が低く、複雑な証券を利用したり、未公開株式に手を出すこともあるとCordaro氏。「ヘッジド・ミューチュアル・ファンド・ストラテジーの要素すべてを享受することはできないだろう。私は完全なフォーマットを持つヘッジファンドをお勧めする。その方がヘッジファンドの恩恵を受けられるからだ」

手数料と税金

従来のヘッジファンドの利用資格がある投資家でも注意しなければならない点があります。一般的な管理費は2%で、成功報酬は20%です。こういった高い手数料は一流のマネージャーをひきつけますが、これはまた利益に食い込むこともあります。ファンド・オブ・ヘッジファンズの年間管理費は1%で成功報酬は10%という場合もあります。このように投資家は2重の手数料を支払わなくてはなりません。また、ヘッジファンドは通常ミューチュアル・ファンドよりも頻繁に取引を行いますので、その分だけ税金が高くなります。実際、ヘッジファンドへの投資家は毎年収益の半分を手数料と税金に取られていくと、ヘッジファンドなどへ投資を行う富裕層投資家へのアドバイス業を行うHermitage Advisors Ltd.の代表取締役Vladimir Belinsky氏は言います。ヘッジファンドによっては税金と手数料の影響を少なく抑えられるほど十分な収益を生み出すものもありますが、そのためにはおよそ20%の年間収益が必要だと同氏は言います。

レバレッジと空売り

レバレッジと空売りによってヘッジファンドは市場が下落していても安定した収益を生み出すことができます。しかし、これにより従来のミューチュアル・ファンドにはなかったリスクが伴います。ショート・ポジションは取引している証券の価格が上がり続けた場合、多大な損失を出すことがあります。逆にロング・ポジションはゼロ以下になることはありません。レバレッジ(借入金)は収益を倍にすることができますが、同時に深刻な損失を出す可能性もあり、マネージャーがポジションを弱気相場に売却しなくてはならないような場合もあります。「レバレッジを使える能力というのは重要だが、それによってリスクのレベルも格段に上がるということを理解しておく必要がある。市場をかく乱するような出来事がない限り、高レバレッジのストラテジーは非常によく機能し、一定した収益を出すが、一旦そういった出来事が起これば事態は最悪となる」とCordaro氏は言います。

ロックアップと低い流動性

ヘッジファンドはミューチュアルファンドと違って毎日資金を引き出すことはできません。多くのヘッジファンドにはロックアップと呼ばれるルールがあり、少なくとも3カ月は資金を引き出せません。ファンドによっては3年もロックアップを続けるところがあります。また、投資家によって引き出せるファンドの資金額を制限する“ゲート”と呼ばれる条項もあります。ヘッジファンドへの投資額が非常に大きい投資家が資金の引き出しを要求した場合、ゲートが発動され、すべての償還は凍結されます。ロックアップとゲートはヘッジファンド・マネージャーが流動性の少ない資産や証券に投資できるようにするためのものです。

投資家は自身の資金が長い期間引き出せなくなるという状況を知っておく必要があります。「投資家はロックアップのルールや、こういった条項によって利用できるマネージャーのタイプが決定されるということを知っておくべきだ」と、コンサルティング会社のA&C Advisors LLCの設立者であり、ヘッジファンドに関する様々な著作を執筆したDaniel Strachman氏は言います。「短期間で資金が必要になる可能性があるならば、ヘッジファンドに投資すべきではない」



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