2012年6月19日火曜日

マネージド・フューチャーズ、小口投資家のポートフォリオに進出

数年前まではヘッジファンドや機関向け商品の中でしか利用できなかったマネージド・フューチャーズが、今ではますます多くの小口投資家のポートフォリオに組み込まれるようになってきています。マネージド・フューチャーズ・インデックスを使用するパッシブなストラテジーであれ、商品取引顧問(CTA)のアクティブなマネージメントであれ、マネージド・フューチャーズはあらゆる種類の小口投資家向け商品の中にますますあふれるようになってきています。

ETFとミューチュアル・ファンド・マネージャーは、市場に相関性のない多様性をポートフォリオに与えることができるという点でマネージド・フューチャーズは魅力的であると言っています。彼らによるとこういったストラテジーの必要性は2008年の市場危機以降、非常に顕著になったといいます。この年、S&P 500指数は37%急落しましたが、Diversified Trends Indicator Index(24の流動的な米exchange traded先物契約から成るロング/ショート指数)は8.29%のプラスとなりました。それ以来、Jackson National Life、Principal Funds、Arrow Funds、WisdomTree、Forward Fundsといった企業が、マネージド・フューチャーズを投資ストラテジーの要にすえた小口市場向けの商品を開発してきました。同時にAltegrisやAQR Fundsといったヘッジファンドや機関マネージャーはミューチュアル・ファンドを通じてその投資技術を大衆向けに拡大させてきました。

しかし、マネージド・フューチャーズをミューチュアル・ファンドの規制構造に適応させるのは簡単ではありませんでした。そのため、マネージド・フューチャーズは数年前まで日の目を見ることができなかったのです。ファンドは先物契約への直接投資を禁止されています。このため、仕組債に投資するかオフショア手段を用いて投資を行ってきました。どちらの方法にしても2008年以前に利用できたマネージド・フューチャーズ・ファンドはほとんどありませんでした。「危機の最中には多様化の手段はほとんどなかった」とETFプロバイダーのWisdomTreeで研究責任者を務めるJeremy Schwartz氏は言います。マネージド・フューチャーズは多様性を供給することができ、市場が下落した際にも持ちこたえることができました。「そのため、今マネージド・フューチャーズに注目が集まっている」。

2011年1月、WisdomTreeはManaged Futures Strategy fund(WDTI)をスタートさせました。これはDTI指数に対応するリターンを供給するよう設計されたアクティブ運用型ETFです。経費率95bpのこのファンドは、定量的でルールに基づいたストラテジーを用い、米国債先物、通貨先物、コモディティ先物とスワップでロングとショートを行います。

Schwartz氏によるとWDTIは2億ドル以上の資産を集め、5番目に好調なスタートを切ったということです。しかし、過去2年間に創業した多くのマネージド・フューチャーズ・ファンドと同じく、WDTIファンドはパフォーマンスにおいては大失敗となりました。設立から3月末までにこのファンドは10.21%の損失を出しています。年間のパフォーマンスはさらに悪く、15.60%のマイナスでした。3月末時点の純資産は2億3760万ドルとなっています。

WisdomTreeの不調なパフォーマンスは、市場の価格トレンドの動きを追うことに依存するストラテジーのリスクを明らかにしています。つまり、変動の大きい市場は価格トレンドを分断するため、ストラテジーを遂行するのが難しいのです。
昨年はこのことの良い例となったとMorningstarのオルタナティブ投資アナリストのJosh Charlson氏は言います。「昨年の10月と5月に価格が反転した際に起こったことがそのよい例だ。2つの大きな価格反転が起こり、マネージド・フューチャーズは2回損失を出した」昨年DTI指数は7.39%下落し、現在までに5.24%下落しています。

しかし、成績が振るわなくとも、小口投資家向けのマネージド・フューチャーズ・ストラテジーの勢いは衰えません。昨年は米市場で13の新しいマネージド・フューチャーズ・ミューチュアル・ファンドが設立され、これは2010年と2009年の2倍以上であると先月下旬にMorningstarとBarron’sによって出された研究は示しています。マネージド・フューチャーズ・ファンドへの販売はMorningstarによると昨年オルタナティブファンドの7つのカテゴリーに流入した資産総額232億ドルの何分の1かでしたが、乏しい収益にも関わらず、売上高は飛躍的にアップしました。マネージド・フューチャーズ・ファンドは昨年、6.9%のマイナスとなったにも関わらず、純売上高は36億ドルとなりました。

メリーランド州オルニーの資金運用会社Arrow Fundsは2010年にManaged Futures Strategy fundを立ち上げ、マネージド・フューチャーズ・ファンドの採用が今後ますます増えると見越しています。このファンドはTrader Vic Index (TVI)を追い、流動性、経済的重要性、信用の安定性に基づいて選ばれた金融先物とコモディティ先物を50/50の割合で組み合わせています。Arrowはマネージド・フューチャーズ・ファンドにパッシブ運用型ストラテジーを採用しています。この方がアンダーライイングの保有の透明性が増し、低い経費率で提供できるからだとArrowのCEOで投資ストラテジー責任者のJoe Barrato氏は言います。Barrato氏によると、マネージド・フューチャーズの最近の成績不振によっても伝統的な資産のヘッジ手段という点ではその有用性は損なわれていないということです。この資産クラスは長期的に成長していくと彼は見ており、アメリカの赤字やユーロ圏の経済不安、ワシントンでの政治的行き詰まりなどによってマネージド・フューチャーズのような相関性のない資産が今後求められるようになってくると指摘しています。た。2010年には43億ドル、2009年には27億ドルだった米マネージド・フューチャーズ・ファンドの総資産は昨年末の時点で75億ドルであったとMorningstarは伝えています。マネージド・フューチャーズの売上を伸ばした最大の要因は多様化への需要と市場との低い相関性にあるとMorningstarのCharlson氏は言います。「散々な収益だったにも関わらず成長率は著しい。このストラテジーは勢いを増していると思われる」

マネージド・フューチャーズのストラテジーはまた、UCITSを通して米国外にも売られています。ニュージャージー州パーシッパニーのヘッジファンド組織であるNuWave Investment Managementは1年前ダブリンでCombined Futures PortfolioのUcitsバージョンを始めました。Man GroupやGAMといった他の企業もマネージド・フューチャーズを用いるUCITSファンドを創業しています。

投資家の中にはマネージド・フューチャーズ・ストラテジーに投資を行っていて、それに気づいていないという人もいます。アイオワ州デモインの保険業者Principal Financial Groupの資産管理部門であるPrincipal Fundsは昨年10月にマネージド・フューチャーズをストラテジーの一つとして使用するマルチ・オルタナティブ・ファンドのGlobal Multi-Strategy Fundを始めました。サブアドバイザーを採用するこのファンドはいくつかのヘッジファンド・マネージャーを含み、年金制度を通じて販売されるターゲットデート、ターゲットリスクファンドのPrincipalのラインアップの中のアンダーライイングファンドとして加えられました。ファンドの持つ7つのサブアドバイザーの中の一つ、AQR Capital Managementはファンドのマネージド・フューチャーズ・ストラテジーを採用しているとFinnegan氏は言います。Principalのターゲットデート、ターゲットリスクファンドは創業時にはGlobal Multi-Strategy Fundに資産の1~2%を配分するに過ぎませんでしたが、運用資産およそ3億2500万ドルの創業まもないファンドを育たせるには十分であったとPrincipal Fundsの最高投資責任者であり、商品開発担当者のMike Finnegan氏は言います。Global Multi-Strategy Fundの手数料はファンドのC shares にしては4.31%と高くなっています。

保険業者もまたマネージド・フューチャーズ創業の波に乗るべく、かつては機関や寄付基金に限られていた投資手段をアドバイザーや小口投資家に提供するための商品を始めています。Jackson National Life、Axa Equitable、Nationwideといった企業も様々な年金を始めており、マネージド・フューチャーズを含む、相関性のない資産クラスの利用を可能にする代わりに、従来のVAによる恩恵や保証を撤廃しています。様々な年金を用いることで、企業は免税対象を概算することができます。

小口投資家はより多くの資産がオルタナティブな資産クラスに流れ込んでいくにつれ、より多くのマネージド・フューチャーズ商品が市場に出てくることを期待しています。Cerulli Associatesによる最近の研究ではオルタナティブ・ミューチュアル・ファンドによる保有が10年間で資産総額の15.8%となると予想しており、2011年の2.8%よりも増える見込みであるということです。マネージド・フューチャーズは少なくともこういった資産の何%かをとらえるだろうとBarrato氏は言います。1980年代にはコモディティへの投資がエキゾチックだと考えられていたように、今のところ、マネージド・フューチャーズは小口の市場からは少し風変わりだととらえられています。しかしこの見方は変わってきていると同氏は言います。「この資産は主流になりつつあり、この分野への配分がますます多くなってくるだろう。こういったことをウォール街や投資銀行が10年前に考えていてくれたら、と思う。しかし、残念ながらこの資産クラスへの配分を行うまでには過去10年で起こったような出来事が必要だったのだ」。




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