2012年6月27日水曜日

スタイル・ドリフト-あなたのヘッジファンドは大丈夫?

“スタイル・ドリフト”とは、ヘッジファンドのファンドマネージャーがあらかじめ投資家に説明した投資戦略を別の戦略に変更することを指します。この言葉はかつてプロのヘッジファンド・アナリストが用い、難解に聞こえたものですが、最近では規制当局や不満を抱く投資家がこの“ドリフト”を問題視するようになってきました。

“ドリフト”について質問されると、マネージャーは決まって、自信満々に“投資ストラテジー”の項目が記載された覚書を取り出し、ファンドは金融界で知られたいかなる証券に投資してもよいということを説明した法律用語の一覧を見せてきました。この説明文によりドリフトへの申し立てを排除することができるといいます。「我々は何に投資をしてもよいことになっているので‘ドリフト’という概念自体に意味がない」というのが従来の考え方ですが、近年の訴訟や広告規制の緩和によって、私たちはただ長々と専門用語を並べた説明を見せられるだけでは納得できなくなってきています。

近年のSEC対Rooney、Solaris  Management訴訟では、ファンドマネージャーがファンド資金を個人の利益のために乱用したとしてSECに訴えられました。これ自体は特に目新しい事件ではありませんが、詐欺行為の根拠が、マネージャーがファンドの投資家への開示なしにストラテジーを変更したという訴えに基づいているという点がこれまでと大きく異なるところです。

改定されたフォームADVともうすぐ実効となるフォームPFによってもたらされる大量のデータの分析にSECが力を入れることで、こういった訴訟がますます多くなってくると考えられます。フォームPFではファンドのストラテジーについてかなり詳細な説明が求められます(株式マーケットニュートラル、株式ロングショートなど)。

SECはリスク、ストラテジー、金融イノベーション部門を新たに設け、さらにその中に数量調査、リスク評価、インタラクティブ・データのオフィスも新設しました。スタイル・ドリフトが今後SECの規制の対象となるのであれば、こういったオフィスがその申し立てを支持するようなデータを提供することでこういった訴訟を推進することになります。

最近の投資家による訴訟もまたスタイル・ドリフトの問題に関するものが多くなってきています。2012年初頭に起こされた集団訴訟 (Schadv Harbinger Capital Partners LLC) ではメインとなる申し立てはファンドが投資家に対して説明した投資戦略からそれて運用していたことに関するものでした。

また、ヘッジファンドのマーケティング用品はより洗練され、広範囲に使われるようになってきており、特にJOBS Act(雇用創出法)の元で実行される予定の広告規制緩和という点から考えると、単に覚書を提示すればいいというものではなく、マーケティング段階で謳われた投資戦略を指摘する訴訟が増えると考えられます。例えば覚書でファンドがいかなるものにも投資できると書かれていた場合でも、募集にあたってファンドが中国にフォーカスした新興成長市場ファンドだと謳っていた場合、マネージャーがファンドのポートフォリオを大きくアイスランドに割り当てれば、スタイル・ドリフトの件で敗訴する可能性が多いにあるということです。

この分野における判例法は徐々に発展しており、今後も注目していく必要があります。また、投資家とマネージャーの双方はこの問題を理解し、互いの相対的地位を注意深く見極めていく必要があるでしょう。



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