マネージドフューチャーズは、商品価格のボラティリティーを背景に、一貫して投資機会を提供している。クラス3ミルク先物(ClassIII Milk Futures)などの薄商いの市場においては、ボラティリティーとリスクが高い。アメリカのハートランドに、こうした乳製品産業のボラティリティーにレバレッジをかけリスクを軽減しようとするダン・シンドラー氏という人物がいる。同氏はKDMTradingという投資会社の重役だ。同会社は、様々なリスクヘッジの戦略を用い、年間480億ドル規模の米国の乳製品市場における価格変動のリスクをヘッジしようとする酪農業者にサービスを提供している。同氏によれば、「先物市場においては、米国の酪農業者による生乳生産の5%~10%しかヘッジされていない」という。
これとは別に、シンドラー氏はSchindler Capital Management, LLC.において、商品投資顧問(CTA)を運営している。同氏の「Dairy Advantage 」ファンドは運用資産総額およそ170万ドルを擁し、2006年以来運営を行っている。同ファンドは投機的なファンドで、米国の乳製品市場で先物を売買し利益を追求している。2011年8月時点で、合計利回りは3647.93%を記録。(合計利回りは、特定の期間中にもたらされた収益の合計で、初期投資金額と最終資産金額の差額を比率で表現することによって求められる。)
ミネソタ州の小さな町のファンドマネージャにしてはすばらしい結果だ。そのファンドの規模にもかかわらず、同氏は米国の酪農産業におけるリスクヘッジにおいて、ますます大きな役割を果たしつつある。同氏の酪農業者や乳製品製造業者、商品取引業者との大きなネットワークは、同氏をして、ボラティリティーの高い乳製品市場参加者の筆頭に位置づける。同氏によれば、同ファンドは年間に3~5のポジション(建て玉)をとる。ほとんどのポジションは数週間から数ヶ月持続するという。
シンドラー氏はやや米国の乳製品市場で異端児的な存在でありながらも、アメリカ中西部の実直かつ実践的な価値観を失っていない。同氏は、小さいながらも成長中の市場では、同ファンドに限界があることを認識している。「このファンドがこの市場で勝ち残れない時があるかもしれない、そしてその時はすぐに訪れるかもしれない」と同氏は言う。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)において、クラス3ミルク先物の売買高は2011年9月16日時点で234枚であった。
シンドラー氏は、現在のミルクの平均売買高(取引のボリューム)に基づいて、「同ファンドは運用資産総額が500万ドル前後に達した時点で、打ち切りするかもしれない」と言う。「しかし、市場の5%~10%しかヘッジされていないため、成長の余地は大きい」と加えた。
Dairy Advantageプログラムはほとんどの取引がクラス3ミルク先物なので、テクニカル分析ではなく、主にファンダメンタル分析を用いて投資意思決定を行う。投資顧問は、時折その他の農業・非農業商品先物を取引する権利を持つ。ファンダメンタル分析は、特定の商品の市場の外的要因を考慮する。例えば、その特定の商品の需要と供給に影響を与える天候や輸出入、政治的出来事を考慮しながら、その商品の将来の価格を予測する。その他の要因は、ミルク生産の統計、乳牛の屠殺日量、餌付費用と天候などを含む。USDAやNASSの週間・月間の報告に加えて、投資顧問は全国に酪農業者やピット・トレーダーとのネットワークを構築しており、市場予測に必要な材料を入手する。同ファンドはトレンドフォロー型のアプローチを採用するため、取引量は極めて少なくなることが期待される。ポジションは通常、数日、あるいは数週間や数ヶ月間維持されることも少なくない。しかし、急な状況の変化によりポジションを解消したり、ポジションを逆転したりする時など、取引量が一時的に増加することもある。
マネージドフューチャーズは誰にでも向いているわけではない。その投資家の適合性のうえから、また当人がそのプログラムの取引スタイルによる損失のリスクと収益の可能性を理解するのに十分な量の情報が提供さたうえで、判断をするべきである。規定された最小のリスク・キャピタル(資本)を保有していることに加えて、投資家はそのプログラムに対するリターン(収益)の現実的な期待と、起こりうるドローダウンに対する寛容性を持たなければならない。CTAがいかにすぐれた投資技術を持っていたとしても、先物取引においては損失のリスクは必ず存在する。
よくまとめられたCTAのデータベースへのアクセスを投資家に提供している企業が数社ある。投資家はこうしたデータベースを利用することで、運用実績を基にCTAのランキングを求めたり、投資顧問別に最高・最低のパフォーマンスを比較したりすることが可能だ。
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