2012年9月5日水曜日

NY当局、大手買収ファンドの税務戦略を調査

米ニューヨーク・タイムズ紙によれば、大手買収ファンド各社が米国で数億ドルにのぼる税金の過少納付につながった可能性のある税務戦略について、当局の調査を受けている。

・政治的な動き

ロムニー氏がCEOを務めたベインキャピタルも当局の調査を受けている。

関係者によれば、民主党系のシュナイダーマン・ニューヨーク州司法長官が進めるこの調査の対象には、米買収ファンドのベインキャピタルやコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、アポロ・グローバル・マネジメントが含まれる。ベインは米大統領選で共和党候補に指名されたロムニー前マサチューセッツ州知事が最高経営責任者(CEO)を務めていた。

ある買収ファンド幹部は「これは明らかに政治的な動きだ。予想はされていたがむしろ、もっと早く実施されなかったことに驚く。ベインとロムニー氏が数千万ドルを節税していたとすれば、調査の対象になるのは当然だ」と語った。

今回の調査は大統領選のさなかに明らかになった。再選を目指すオバマ陣営はロムニー氏がベインのCEOであった点や、在職中の同氏への課税率を攻撃している。

民主党はロムニー氏が数年分の確定申告書を公表していないことを非難し、ベイン経営時の雇用創出の実績にも疑問を呈している。一方、ロムニー陣営は景気低迷の好転に必要な経験がある証しとして、ベインでの実績をアピールしている。

・手数料を再投資する戦略

シュナイダーマン司法長官は買収ファンド業界の「手数料放棄」戦略に関する調査の一環として、召喚状を発行した。各社はこの戦略を使って、投資家から受け取った運用手数料をファンドに再投資した。この手数料から得た利益にはキャピタルゲインに対する税率が適用され、通常の収入として扱われる場合に比べて大幅に税率が低くなる。この戦略の合法性を巡って議論が起きている。同戦略はリスクが高く、運用益が出なかった場合にはファンドの運用担当者が損失を抱える可能性も持ち合わせていた。

調査はニューヨーク州の納税者保護部門が実施している。同部門は昨年にシュナイダーマン司法長官により新設されたばかり。この戦略の活用を明らかにした買収ファンドに加え、どれほど広範囲に活用されているのかを判断するために大手ファンドにも召喚状が送付された。

ニューヨーク州司法当局はウォール街の大手金融機関も管轄に含んでおり、これまでも大手投資ファンドへの厳しい姿勢で知られる。

ベイン、アポロ、KKRはいずれもコメントを控えた。当局に提出した書類によれば、KKRは2007~09年には運用手数料放棄の手法を活用していたが、それ以降はこの慣行を断っている。

ファンドに支払われた運用手数料は正確にはリスクのある資本にはならないため、投資銀行でのボーナスや「勝訴しなければ報酬が発生しない」弁護士と同様に、所得として課税されるべきだとの意見もある。


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