2014年3月24日月曜日

Global Sigma Groupのラオ博士が語る:マネージドフューチャーズのポートフォリオ構築の要点

今日は、Global Sigma Group(グローバル・シグマ・グループ)のハンミン・ラオ博士に、マネージドフューチャーズのポートフォリオ構築の際の注意点について談話的に語ってもらいました。

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質問: 

ラオ博士、私のところにお問い合わせ頂く、日本の投資家の皆様のなかには、効率的なポートフォリオの作成についてお悩みの方が多くいらっしゃいます。

特によくあるパターンは、Winton Capital(ウィントン・キャピタル社)、Man AHL(マン社)、BlueTrend (Blue Crest Capital Management、ブルー・クレスト・キャピタル社)、Transtrend(トランストレンド社)、チューリップ・トレンド・ファンド(Tulip Trend Fund)などの大手マネージドフューチャーズ(ヘッジファンド)のドローダウン(マイナス実績)に悩まされているというケースです。

こうした投資家の現実的な悩みを踏まえて、効率的なポートフォリオ作成について全体的なアドバイスを頂ければと思います。

ハンミン・ラオ博士:

マネージドフューチャーズには数多くのプログラムがありますが、どのように自分に合ったプログラムを選べばよいでしょうか?ある程度のリターンを狙いつつリスクを最小限に抑えたポートフォリオを、どのように作れば良いでしょうか?多くの投資家がこれらの課題に直面し、答えを見出せずにいます。

マネージドフューチャーズのポートフォリオ作成には、幾つかの基本的な原則があります。これらの原則を知っておくことが、投資家の疑問に対する答えの鍵となるでしょう。

【1.資産配分】

マネージドフューチャーズには様々な異なる資産クラス(株式、エネルギー、金属、通貨、農産物、オプション等)があります。全ての資産クラスにエクスポージャーを持つ必要はありませんが、1~2種類だけに限定する必要もありません。

【2.同一資産クラス内での比較】

ポートフォリオに組み入れる候補として、同じ資産クラスのプログラムの中から、3~5プログラムを選び、比較します。プログラムに順位をつけるためには多くの要素があります(年率リターン、最大ドローダウン、リスク調整済リターン(シャープ・レシオ、ソルティノ・レシオ等)、運用資産残高等)。投資家によって期待するリターンやリスク性向は様々です。特に機関投資家は、より厳密な比較を行います。機関投資家は独自のデューデリジェンスを行い、ポートフォリオマネージャーの経歴、運用インフラ、プログラムの財務情報、コンプライアンス等を精査します。これらは大変時間のかかるプロセスです。個人投資家はこのようなデューデリジェンスに割く時間もエネルギーもなく、ファイナンシャルアドバイザーの薦めに従う場合がほとんどです。ファイナンシャルアドバイザーにマネージドフューチャーズについて尋ねる場合には、上記で挙げた比較要素を参考に、あらかじめ質問事項をリストアップすると良いでしょう。

【3.ポートフォリオ選択】

資産配分とプログラム選択を行ったあと、最終的にどのようにポートフォリオを完成させれば良いでしょうか?大手投資顧問、または新興投資顧問が良いのでしょうか?知名度の高いプログラムとニッチ戦略のプログラムのどちらが良いのでしょうか?

ポートフォリオ選択に関しては、これまで数多くの研究がなされてきました。機関投資家はしばしば顧客からの委任を受けています。例えば機関投資家は、ある一定の規模以上の運用資産のもと、あらかじめ指定された債券やプログラム等に投資しなければなりません。

個人投資家はより柔軟で、通常は期待収益率やリスク調整済リターンが最優先事項です。

Winton Capital(ウィントン・キャピタル社)、Man AHL(マン社)、BlueTrend (Blue Crest Capital Management、ブルー・クレスト・キャピタル社)、Transtrend(トランストレンド社)などの大手マネージドフューチャーズ(ヘッジファンド)は過去に好調なリターンを出している一方で、相互に対して非常に高い相関性を持っています。したがって、これらのプログラムはお互い同じ時期に利益を上げ、同じ時期に損失を出す傾向があります。

CTAの資産規模トップ5プログラムは運用資産の合計が750億ドルで、マネージドフューチャーズ界全体の運用資産の30%を占めます。

またこれらのプログラムは総じてオプション以外の全資産クラスでトレードを行っています。もし投資家がこれらのプログラムとは異なる特性や優位性を望むなら、他のプログラムを選ぶ必要があります。

運用資産トップ5のCTAは全てトレンド追従型でオプション取引を行わないため、オプション取引プログラムを利用することは、分散投資の点で良い選択と言えるでしょう。平均回帰型プログラムを選ぶと、トレンド追従型のプログラムが損失を出すときに、平均回帰型プログラムは利益を上げる傾向にあります。

負の相関性を利用することで、期待収益率を犠牲にせずにリスクを低減させることができます。またオプション取引を行うプログラムも、資産を分散化する手段として有効です。したがって、真に分散化されたポートフォリオを作るためには、トレンド追従型プログラムと負の相関関係にある平均回帰型プログラムやオプション取引プログラムを選択することが望ましいと言えます。

というわけで、次回ファイナンシャルアドバイザーと話す時には、上に挙げた基本原則を参考にしてください!

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【プロフィール】投資顧問ハンミン・ラオ博士(Dr. Rao)は、2005年初頭にEllington Management Groupで計量アナリストとしてキャリアをスタート。2006年の6月には、グローバル・マクロ・トレーダーとして、SACキャピタルに入社。1億ドル以上の資産を運用し、通貨、金利、コモディティ、株式ETF/インデックス/先物、CDS、債券、ハイ・イールド、クレジット、またそれらオプションなどあらゆる種類の市場で取引を行ってきました。主なターゲットは、流動的エクイティとコモディティETF/インデックス/先物、またそれらのオプションです。

2009年1月ラオ博士は、統計アービトラージ・トレーダーとして、ミレニアムパートナーズに移籍し、その後2009年12月に、外部QEPクライアントに対応するためGlobal Sigma Groupを立ち上げました。同博士は、1997年に中国の名門である清華大学にて理学士号を取得、1998年にはハーバード大学で理学修士、2005年に同じくハーバード大で博士号を取得しています。





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